フローレンス・ナイチンゲールはイギリスの看護師であり、近代看護教育の母として世界的にも有名な光の天使(クリミアの天使)です。
戦場で兵士の治療に務めたほか、当時の医療制度を改革した人として、日本でも非常に有名で、看護師や医療関係者だけでなく、多くの方々の尊敬を集めてきました。
今回は、ナイチンゲールについて、その人生を踏まえての格言や名言、さらには象徴的なエピソードなどを紹介していきます。
フローレンス・ナイチンゲールの格言・名言集
ナイチンゲールの名言① 目的を高く掲げる
⭐You will be stepping back unless you keep improving. Raise your purpose high.
⭐あなた方は進歩し続けない限りは退歩していることになるのです。目的を高く掲げなさい。
高く理想的な目標を掲げることによって、その目標に向かっての努力の継続が始まります。
目標を高く掲げるためには「志」が必要です。
ナイチンゲールの名言➁ 大切なもの
⭐When something more important than the life becomes a lot, man and worry become a lot.
⭐自分の命より大切なものが多くなると、人間、気苦労が多くなる。
地位や名誉や財産などを握りしめて、本当に大切ではないもののために生きるようになると、数多くの気苦労を生みます。
それが精神的にもよくないで病の発症の原因となることもあります。
ナイチンゲールの名言③ 現場の大切さ
⭐Whatever you do, you can only learn in the field.
⭐どんな仕事をするにせよ、実際に学ぶ事ができるのは現場においてのみである。
机上の空論では真に学ぶことなく人も助けることができません。
現場において見聞きし、経験を積むことのなかに、本当の意味で「学ぶ」ことができるのです。百聞は一見にしかずにも似た言葉です。
ナイチンゲールの名言④ 組織のあり方
⭐There is nothing against which I held out by the organization which has no progress.
⭐進歩のない組織で持ちこたえたものはない。
進歩するということは良い方向に「変化」することです。
変化のない組織は持ちこたえることができないことは、ドラッカーなどの現代の経営学にも通じる言葉です。
ナイチンゲールの名言⑤ 恐れに対して
⭐How very little can be done under the spirit of fear.
⭐恐れを抱いた心では、何と小さいことしかできないことでしょう。
恐怖心を抱いた状態では力を発揮できず、大きな結果を残せません。
恐怖心を打ち破るものは「愛と勇気」です。勇気をもってチャレンジすることで大きな仕事ができるようになります。
ナイチンゲールの名言⑥ 強い決意
⭐今年で30歳になる。キリストが伝道を始めた歳だ。もはや子供っぽいことは終わり。無駄なことも、恋も、結婚も。(ナイチンゲール)
もちろん一般的には恋も結婚も無駄ではないことをナイチンゲールは知っています。
しかし、自分のやらなくてはならない「使命」の成就のために、何もかも打ち捨てて、言わば「空手にして立つ」という彼女の気迫が伝わってきます。
ナイチンゲールの名言⑦ 女性の自立
⭐Be independent, woman. Stand on your own feet.
⭐女性よ自立しなさい。自分の足で立ちなさい。
当時の女性達に対し自立心を持つことの大切さを説いたのはとても勇気のいることです。
ナイチンゲールの名言⑧ 病院の第一条件
⭐The very first requirement in a hospital is that it should do the sick no harm.
⭐病院の第一の条件は、患者に害を与えないことである。
「病院の構造が患者に害を与えていることもあるのではないか」という、一般的な常識にとらわれずに物事の真実を正しく見る目が、ナイチンゲールの活動や変革運動の出発点となりました。
ナイチンゲールの名言⑨ 経済的な思考
⭐ I also depend on spirit of member's service, but that's also powerless without economic aid.
⭐構成員の奉仕の精神にも頼るが、経済的援助なしにはそれも無力である。
ナイチンゲールの素晴らしさのひとつは、看護師としての深い愛の思いとこの世的経営の視点の両面があるところでしょう。
お金や経営の重要さも理解し、理想を実現するためには、現実的にしっかり先を見据える力も大切であることを教えてくれます。
ナイチンゲールの名言⑩ 行動の大切さ
⭐I think one’s feelings waste themselves in words; they ought all to be distilled into actions which bring results.
⭐人の思いは、言葉に変わることで無駄にされているように、私には思えるのです。それらは皆、結果をもたらす行動に変わるべきものなのです。
(参考名言)⭐そこに明確な行動が伴っていなければ、思いを十分に伝えることは難しいと思う。 (ナイチンゲール)
もちろん言葉そのものが悪いわけではありません。それが口先だけではなく、真実の言葉ならば。
心の込められた思いならば、必ず行動をともなうはずです。その思いが純粋であるなら、勇気を持って行動し、結果を出してゆくべきです。
ナイチンゲールの名言⑪ 天使とは
⭐ An angel is the person who fights for the person who anguishes, not the person who scatters a beautiful flower.
⭐天使とは美しい花をまき散らす者ではなく、苦悩する者のために戦う者のこと。
天使は、うわべだけを飾るかのように、または心地よい世界にだけ存在するかのように、花々をまき散らすものではありません。
天使の本当の優しさや美しさは、苦悩している方を守り、愛を与えてゆくことです。
そのような愛が、本当の意味での「美しい花々をまいてゆく行為」となるのです。
ナイチンゲールの名言⑫ チャンスの捉え方
⭐ I never lose an opportunity of urging a practical beginning, however small, for it is wonderful how often in such matters the mustard-seed germinates and roots itself.
⭐物事を始めるチャンスを、私は逃さない。 たとえマスタードの種のように小さな始まりでも、芽を出し、根を張ることがいくらでもある。
「幸運(チャンス)の女神は前髪だけしかない」というように、チャンスが来ても、優柔不断に躊躇ばかりしていると、そのチャンスは通り過ぎてゆきます。
ただ、チャンスをものにするための前提として、どんなに些細なことでも、チャンスをチャンスと捉えることができるか、それが勝負なのです。
そのためには、何か大切なものを成し遂げる目標や理想を持って、常にセンサーを張り巡らせていることが大切です。
ナイチンゲールの名言⑬ 指導者のあり方
⭐人をおさめる人は、ものごとの些細な面ばかり見たり、自分のつまらない好き嫌いにだけ目を向けてはいけません。
指導者には、ものごとの大小(幹と枝)を見分ける力が必要です。そして、その枝葉ばかりに捕らわれすぎてはいけません。
また、自分の好き嫌いだけで、ものごとを見たり人を使ったりしてはいけないのです。これは現代にも通じるマネジメントの名言です。
ナイチンゲールの名言・格言の背景としての生い立ち
それでは、ナイチンゲールがどんな生い立ちであり、どのような人だったのか、詳しくみてまいましょう。
ナイチンゲールの幼少期
ナイチンゲールの両親はイギリス人の貴族でした。
両親が3年にも及ぶ新婚旅行に行っている途中、イタリアのフィレンツェで生まれます。
ナイチンゲールのフルネームは、フローレンス・ナイチンゲールですが、フローレンスはフィレンツェに由来していると言われています。
小さい頃から決めたことをやり遂げる子供だったとされ、幼少期からナイチンゲールの意思の強さや自立心の強さが伺えます。
神からのコーリング・看護師への道
ナイチンゲールは16歳の時、「神に使えなさい」というお告げを聞きます。これは神からの霊的コーリングです。
そして24歳の時、大飢饉がきっかけで苦しんでいる人を救うため、看護師になることを決めます。
その後は必死で看護・医療の勉強をし、さらにドイツの学校へと入学して本格的な勉強を始めます。
やがてイギリスに戻り病院の手伝いをしながら、素晴らしい看護師へと成長していきます。
クリミア戦争での活躍
1854年、クリミア戦争が勃発するとナイチンゲールは戦場で兵士の看護を行います。
女性ということでなかなか認められない中、ナイチンゲールは必死に看護を行い、やがて認められていきます。
兵士たちからは戦場の天使と呼ばれるようになり、今のナイチンゲールのイメージはこの時に形作られたと言ってもいいでしょう。
ナイチンゲールの晩年
ナイチンゲールは40歳くらいから体が弱くなり、現場で看護することは難しくなります。
そのため本を出版したり、看護学校を設立したりと、今までとは違う形で看護の世界で活躍します。
その教えは世界中に広まり大きな影響を与えました。
統計学などにも優れていて、1910年8月に亡くなるまで、その人生を看護に捧げ続けました。
ナイチンゲールの有名なエピソード
ナイチンゲールのエピソードのうち、有名で印象的なものを紹介します。
看護だけじゃなくさまざまなことに精通していた
ナイチンゲールは貴族の両親の元、さまざまな教育を受けました。
そのため看護の知識だけでなく、統計学や数学、哲学など、あらゆる分野で才能を発揮したそうです。
言葉も複数の言語を操り、いわゆる天才と言ってもいい女性でした。
しかし才能が彼女を優れた女性にしたというよりは、持ち前の愛の念いや意思の強さや根気強さが彼女を成長させたのだと思います。
看護師になるため結婚を断る
ナイチンゲールはドイツの学校へ行く前、イギリスの国会議員である男性にプロポーズされています。
ですが看護師になるという夢を叶えるため、プロポーズを断っています。
結婚すれば安定して幸せな生活が送れたでしょうが、ナイチンゲールにとっては看護師になることが何よりも大切なことでした。
衛生環境の重要さを説いた
クリミア戦争で看護をしていた時、戦場の不衛生な環境が感染症などを引き起こすと考えました。
そこで医療において衛生環境がいかに重要かを痛感し、戦場・医療現場での衛生面の改革を目指します。
ナイチンゲールの努力によって衛生環境が大きく変わり、負傷した兵士たちや患者の状態も少しずつ良くなってゆきました。
実は人気作家の一面も
晩年のナイチンゲールは看護に関する本を出版しています。
看護覚え書というタイトルのこの本は、イギリスだけでなく世界的に大ヒットしました。
看護師を目指す人だけでなく、家庭を守る主婦にも役立つと評判で、当時も多くの女性がこの本を読んで学んでいます。
看護の理想を説き続けたナイチンゲール
ナイチンゲールは看護師としてクリミア戦争での看護や、その後の看護学校設立、医療改革などさまざまな功績を残しました。
まだまだ女性の立場が弱かった当時、こうした結果を残すのはとても大変なことだったはずですが、持ち前の才能と努力で乗り越えていきました。
ナイチンゲールの誕生日は国際看護師の日とされ、今でも看護師を象徴する存在として語り継がれています。
白衣の天使という言葉もナイチンゲールが由来です。今の看護に理想があるのはナイチンゲールの最大の功績と言ってもいいでしょう。